たくさんの食器に同じ模様をつけられるのはどうして?

ノリタケカンパニーリミテド

同じ模様の食器がそろっていると、食卓がおしゃれで素敵な雰囲気になります。でも、どうやって全く同じ模様を食器につけているんでしょうか?洋食器で有名なノリタケに聞きました。

模様を印刷したシートを食器に貼りつけているんだよ。

同じ模様の秘密は「転写紙」にあり!

カップ

食器に絵や模様をつけるには、2種類の方法があります。一つは、筆を使って色を塗ったり絵を描いたりする方法。でも、その方法ではたくさんの食器に同じ模様をつけるのはとても大変です。
そこで、紙に印刷された模様を、食器へそのまま移して絵つけする「転写」という方法を使います。食器づくりでは、この模様を印刷したシート「転写紙」が大活躍します。
転写紙を食器に貼りつけることで、全く同じ美しい模様の食器をたくさん作ることができるんです。

どうやって転写しているの?

1 素材に転写紙を貼りつける

素材に転写紙を貼りつける

水につけておいた転写紙を、食器に慎重に貼りつけていきます。しわになったり、ずれたり、転写紙の下に水や空気が入ったりしないように気をつけています。

2 高温で焼きつける

高温で焼きつける

食器に転写紙を貼ったら、窯に入れて、高温(約850度)で焼いて仕上げます。

高温で焼いて仕上げることを「焼成」っていうんだって

ユイ

3 完成

完成

食器のふちなどを磨いて、汚れや傷がないかの検査に合格したら完成です!

手作業による絵つけは匠の技

人形の顔などのでこぼこしたところや、大きな花びんなどは、筆を使います。
筆を使って食器に直接色を塗ったり絵を描いたりするのは、熟練の人による匠の技が必要です。
美しい模様をつけるには、絵の具の研究・開発も欠かせません。美しさに加えて、人や環境に優しい絵の具を使っています。

手作業による絵つけは匠の技

食器だけじゃなく、こんなところにも

転写紙の技術は、食器だけではなく、ヘルメットやスポーツ用品などに模様をつけるときにも使われています。

ヘルメット

転写紙は曲面に貼ったときに正しい模様になるように設計されているよ

ラケット

転写紙は貼りやすく、密着性が高いことが重要なんだよ

高温に耐えられない素材には
どうやって転写するの?

素材に貼りつけた後に600度以上の温度で焼きつける転写紙は「焼成転写紙」といって、主に食器やタイルなど陶磁器に使われています。
では、プラスチック製品や金属など、高温に耐えられない素材にはどうやって転写しているのでしょうか?
そうした素材には、60~150度程度で焼いて絵つけができる「熱硬化転写紙」というものを使っています。
熱硬化転写紙は、でんぷん質の材料を使用しています。水に浸すことででんぷんが粘着性を持ち、さらに焼くことで、素材の表面に強くくっつくように作られています。

ヘルメットやラケットには熱硬化転写紙が使われているよ

ヘルメットやラケットには熱硬化転写紙が使われているよ

転写紙の絵の具の技術が、意外なところで活躍!

転写紙の絵の具の技術が、意外なところで活躍!

転写紙に使う絵の具は、より美しく貼りやすいものになるように、素材の選択や配合の研究が続けられてきました。その研究は、今ではスマホやパソコンや車など、電子機器の部品を作るのに欠かせない「電子ペースト」という材料づくりに生かされています。絵の具を混ぜる優れた技術や、均一で薄い印刷など、食器づくりで培った技術は、精密な電子部品づくりに通じるものがあったのです。
高性能な電子部品を提供することで、電子機器の小型化にも貢献しています。

電子部品
昭和10年の転写紙の工場の様子

昭和10年の転写紙の工場の様子

電子ペースト

金属や樹脂などを混ぜ合わせて作る電子ペーストは、電子部品の材料になるよ

ものづくりの技術を日々進歩させています

答えてくれた人

株式会社ノリタケカンパニーリミテド
電子ペースト事業部 営業・技術部 村上 歩さん

ノリタケは100年以上前に洋食器の会社として生まれ、食器づくりで培った技術を生かして、今では車やスポーツ用品や電子部品や医療器具など、さまざまな分野に進出しています。
私は転写紙に使用している絵の具の研究をしています。絵の具は顔料と樹脂を混ぜて作りますが、転写紙の貼りやすさやくっつきやすさに影響する樹脂の性能はとても大切なんです。ちょっとした材料の差で仕上がりが全く変わるので、奥深くて大変な世界ですが、そのぶんやりがいがあります。自分の研究の結果が目に見える形で完成するので、きれいにできた製品を見るととても嬉しいです。
将来どんな職業を目指すとしても、自分が不思議に思ったことや、興味を持ったことを大切にしてください。その時すぐに答えはわからなくても、それを大事に覚えておくと、いつか役に立ったり、新しい発見につながったりしますよ。

不思議に思ったことや
興味を持ったことを
大切にしましょう!

答えてくれた人