歌舞伎の上演のためにどんな人たちが仕事をしているの?

株式会社松竹

歌舞伎は日本を代表する伝統芸能として人気があります。ふだんの生活とは全くちがう不思議な世界を見せてくれる歌舞伎を上演するために、どんな人たちが働いているのでしょうか?「京鹿子娘道成寺」の舞台を例に、松竹株式会社に教えてもらいました。

さまざまな専門技術をもった人たちが、ひとつの舞台作品をつくり上げるために細やかな神経を注いでいるよ。

「京鹿子娘道成寺」の物語

紀州(今の和歌山県)の道成寺に伝わる清姫伝説をもとにした物語。寺の鐘供養の日に現れた美女が、手に持つ道具や衣裳を替えながら、恋する思いや心変わりをした男への切ない気持ちを舞う。女はじつは清姫の亡霊で、大蛇となり怨みの残る鐘に巻き付いてしまう。

「京鹿子娘道成寺」の舞台
役者

舞台の上で役を演じる人(※)

※歌舞伎の世界には市川、尾上、中村など「家」「一門」と呼ばれる役者のグループがあり、それぞれに得意な芸や得意の演目がある。役者が親や師匠などの有名な名前を継ぐことを「襲名」といい、このときは華やかな「襲名披露」が行われる。

床山

かつら屋がつくったかつらを役柄と役者の個性に合わせて結い上げ、役者にかぶせる。髪形で、役柄の身分、性格まで表現するので、演目を学び役者と相談しながら結う

小道具

舞台上の建物の中にある道具から、役者の持ち物までを用意する。決まりごとがあり、同じ演目でも役者によって持ち物が微妙に異なることもあるため、知識と経験が必要

狂言作者

もともとは脚本家を意味していたが、今は配役を書いた帳面をつくったり、その他大勢の配役を決めたりする。上演中は舞台の陰に控えて、役者が万が一せりふに詰まったときに伝えたり、幕開けや幕引きのタイミングを伝える柝(拍子木)を打って舞台を進行する

衣装

演目や配役によって、保管してある衣裳からふさわしいものを選んだり新しくつくったりする。上演当日は役者の着付けを行う。舞台終了後の着物の手入れも大切な仕事だ

大道具

舞台の背景画を描きセットをつくることが主な仕事。一番神経を注ぐのは、役者が映える絵にすること。上演中は舞台転換をしたり幕を扱ったり、ときには雪を降らせたりすることもある

照明

舞台と役者をライトで照らす仕事。歌舞伎の場合は「影をつくらない」ことが基本で、演目の流れを深く理解し、その場面にふさわしく役者をきれいに見せる照明にすることが重要

音楽

唄と三味線をはじめ、大太鼓や鼓、太鼓、笛、鉦などを舞台左手の小さな部屋(黒御簾)の中で演奏し、場面の雰囲気や演技を盛り上げる。踊りの伴奏では、舞台上に並んで演奏する

幕引き

狂言作者が打つ柝の音を合図に、幕の開け閉めをする。演目や演じる役者によってタイミングが違うので芝居や役者についての十分な理解が必要

つけ打ち

つけ板と呼ばれる板に木を打ち付けて効果音を出し、役者の動作や物音を強調する役割。役者の動きにぴたりと合った音を出すには熟練が必要

どれもとても重要
な仕事だね!

hinata

歌舞伎とは

「歌舞伎」という芸能の名前の由来は、「傾く」という動詞にあります。江戸時代の初め、当時の流行の奇抜な服装や髪形で世間の約束事とは違う行動をする人々は、「かぶき者」と呼ばれました。「かぶき踊り」は「かぶき者」の奇抜なファッションや行動をまねしたもので、とくに女性なのに男性の格好をして登場した「出雲の阿国」は大人気! しかし、あまりに人気が高かったため、女性が人前で芸能を演じることは幕府によって禁じられてしまいました。このような歴史的経緯から、歌舞伎ではすべての役を男性が演じ、女性役を演じる役者のことを「女方」と呼びます。 最初は踊りとして生まれた歌舞伎ですが、やがて物語のある芝居も演じられるようになりました。それから約400年、ほかの芸能やそのときどきの流行を取り入れて発展し、最近ではマンガをもとにしたスーパー歌舞伎Ⅱ「ワンピース」など新しい試みも続けています。

劇場は楽しいテーマパークです!

答えてくれた人

松竹株式会社
演劇製作部・演劇営業部 橋本芳孝さん

歌舞伎への入り口は、目に入るもの、耳に入るものを、まず自分で楽しむことです。初めから物語を理解する必要はありません。劇場はテーマパークだと思って、楽しんでください。何かひとつ興味が湧いたものがあったら、そこから探っていくと、次から次へとおもしろさが広がっていくことでしょう。歌舞伎には日本のよさや日本人がつくってきた文化が充満しています。その日本のよさに触れていただきたいと思います。

まず一度、歌舞伎を
見に来てください!

松竹株式会社 演劇製作部・演劇営業部 橋本芳孝さん